金山町会津大塩駅近くの国道252号線沿いに「天然炭酸水」と書かれた看板がある。
行ってみると、国道から少し入った空き地の隅に唐突に井戸がある。
天然の炭酸水が湧き出る珍しい井戸なのだから、もっと仰々しくしめ縄が張ってあったりするのかと思っていたが、普通の井戸より粗末に扱われているようだ。
覗き込むと水が盛り上がるように湧いている。その様は滾々と言うよりは隆々と言った方が合っているほどだ。
汲み上げポンプが設置されているが、汲み上げ口が水面に届いていない。今は水位が低い時期なのだろうか。
薬缶に紐が括り付けられたのがあったので、それを井戸に投げ入れ汲み上げて飲んでみると紛れも無く炭酸水である。
錆び臭くてあまり美味くはないが、舌先にチリチリと刺激を感じつつ飲む湧き水は面白い。
井戸の壁面も薬缶の内部も茶褐色になっている。よほど鉄分が多いのだろう。
この天然炭酸水は昔から薬効の有る水として知られていたらしい。
明治10年に慢性胃腸病や便秘などの妙薬「太陽水」として白磁の壜に詰めて販売され、明治36年には「岩代天然炭酸鉱泉株式会社」が設立され、「芸者印タンサン・ミネラルウォーター」としてドイツなどへ輸出された。国内では「万才炭酸水」の商標で販売された。しかし、輸送コストが想像以上だった事が原因で休業。
現在は加熱処理をせずに、特殊濾過殺菌を施した上で市販している。
“芸者印”とは、どんなデザインだったのだろう。
■□■ 湧水情報 ■□■
湧水名 : 天然炭酸水
住所 : 福島県大沼郡金山町大塩
駐車場 : 特になし
写真 : 天然炭酸水の井戸