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2021年6月6日日曜日

つげ義春と塔のへつり / 南会津郡下郷町 (2021)

塔のへつり【とうのへつり】

侵食と風化による造形

世の中の奇岩や珍妙な地形はほとんどが堆積と隆起と侵食と風化の賜物である。
“塔のへつり”は河食地形の好例として、国の天然記念物に指定されている。
ところで“塔のへつり”とはどう言う意味か。
調べてみると『へつりとは川に迫った険しい断崖のことで、塔の形をした断崖の意味』とある。また『へつりとは水際の岩場を横へ横へと移動すること』の意味も有るらしい。後者の方が塔のへつりに合っている。
どちらにしても、へつりという言葉は“塔のへつり”以外に使っているのを見た事も聞いた事も無い。

つげ義春の作品『もっきり屋の少女』

“もっきり屋の少女”は1968年8月に、漫画雑誌『ガロ』に発表されたつげ義春による短編漫画作品である。
つげ義春が塔のへつりの土産物屋で買った会津地方の方言を書いた手ぬぐいが切っ掛けとなり生まれた短編作品だが、作品中にはその舞台を塔のへつり付近とも会津地方とも特定できる要素はチヨジの言葉以外には皆無である。
コバヤシチヨジの言葉には会津方言を用いてはいるが、二人の常連客との会話全体を通してみると会津地方が舞台とは断言できない作品である。
作品中の居酒屋で働く少女コバヤシチヨジは一銭五厘で買われて来た身の上を「みじめです」と語る。
二人組の客を相手に乳首を触らせ、その快感に5分間耐えられたら赤い靴を買ってもらえる賭けをするチヨジ以外に居酒屋の主人などは登場しない。チヨジが一人で切り盛りしている居酒屋らしい。
チヨジが働く居酒屋で是非とも一杯やってみたい。
つげ義春が作品を描く切っ掛けとなった手ぬぐいを買った店は何処なのかとそれぞれの土産店を覗いてみたが、どこにも方言を書いた手ぬぐいは売ってはおらず、また、つげ義春との関係を示す物も無かった。

塔のへつり駐車場問題

会津鉄道会津線の踏切を過ぎた辺りから両側に有料駐車場が目立ち始める。
こんな所に駐車場すれば400メートルほど歩く羽目になる。
塔のへつりのすぐ近くには無料の駐車場が有るには有るが、これは土産物店の駐車場になっていて何かしらの商品を買う事を条件に無料で駐車できる所謂“飯盛山方式”なのだ。
無料駐車場の文字に騙されて車を停めると土産物店の店員が来て何か買えと言う。
購買意欲をそそる商品が有ればもちろん買わせて頂くが、どこの観光地でも売っている合成保存料タップリの菓子やキノコの水煮などが思わず「高っけーっ!」と声に出しそうな値段で売られている。
このような商売をしているといずれ飯盛山のような運命を辿る事になる。
キャッチセールス紛いの商売に見切りを付けて、つげ義春氏の協力を仰いでオリジナルのコバヤシチヨジ手ぬぐいの製作販売をする位の土産物店としての矜持を見せて欲しいものだ。



塔のへつり(塔の岪)

住所 : 福島県南会津郡下郷町弥五島下タ林
見学 : 無料
駐車場 : 有料もしくは土産物を買わされる